2016年7月クール、テレビ東京で深夜放送していた「徳山大五郎を誰が殺したか?」の
サウンドトラックをスキャット後藤さんが担当しました。
僕とスキャット後藤さんは、ゲームタイトルで一緒に仕事をする事が多いのですが、
どのタイトルでも後藤さんらしさというのがにじみ出ていると思います。
常々、そういった個性的な曲達を、何とか出来る限り形としてお届けしたいと思い、
フレアウエーブレコーズというレーベルを起ち上げた次第です。
今回は、レーベルとして第2弾なのですが、
記念すべき第1弾は、「POSSESSION MAGENTA」というゲームタイトルで、
ミステリアスな学園ドラマです。
ここでも、「徳山大五郎を誰が殺したか?」とは、また少し違った後藤さんワールドが広がっており、
とても聴き応えのある作品になっています。
他にも沢山、かわいいもの、ちょっと不思議なもの、グッと来るもの、
いろいろお届けしていければと思っています。
さて、欅坂46総出演のこのドラマは、好評の内に終了したのですが、音楽も好評を博しています。
どうやって、こういった音の世界感が作られたのか?
多少なりとも皆様にお伝えできればと、今回インタビューを行いました。
ドラマを楽しんだ方も、音楽好きな方も、
これから観よう聴こうという方々にも、興味深く読んで頂けると幸いです。
フレアウエイブレコーズ代表 宮本
ここから、今回のサントラについて、幾つか質問させてもらいました。
インタビューを読み終わった後に、改めて、観て聴いてというのも良いですよ!
:10/30日の販売分1500枚が予約の時点で完売しました!率直な感想を教えて下さい。
オリコンデイリー(10/29)で10位だそうです。
驚きというか、奇跡というか、事故というか…
J-popの売り上げから考えると、すごく少ない枚数ではありますが、
サウンドトラックということを考えると驚くような数字でビックリしてます。
売れた要因として欅坂46主演という部分が大きいとは思いますけども、
素直に、ドラマを見てる人たちに音楽が届いたのかと嬉しくなりました。
そして、ドラマの音楽が印象的に残ってくれたのは、
音楽のつかいどころを決めた監督と選曲さんのおかげだと思ってます。
かなり大きいと思ってます。
:どの曲も印象深いですが、全編を通して、どういう音作りを意識しましたか?
ワンシチュエーションでの12話だったので、
そこをどう飽きさせないようにするかという点だったり、
笑いの要素もあったので、サスペンスでありながらも
笑える隙をちゃんと音楽で作るという点だったり、
あとは、欅坂のみんなの演技にいかになじむかということを考えました。
ワークショップを何度も見に行ってたのが、実際に役に立ったと思います。
(曲の7,8割くらいはクランクインのタイミングで出来上がってました)
:曲の制作は、全体のどの段階から始めるんでしょうか?
メインになりそうな曲を数曲、同時に進めて、
それぞれの役割とバランスを見つつ仕上げていきました。
ドラマの音楽は、音楽が変わる瞬間が大事だと思ってるので、
その部分と曲ごとの役割をどう果たしてるか、に気をつけて作ってます。
:音楽でアプローチして行く上で、印象に残ったシーンやお勧めのシーンを幾つか教えて下さい!
音楽で印象的といえば、1話で土生ちゃんの顔アップ(マウス・トゥ・マウス)のシーンで
僕の声が流れるという…。
あそこはシュールだなと思いました。
このドラマはこういうテイストでいくのねという風に思った瞬間です。
打ち上げで土生ちゃんに「あれ歌ってるの僕です。」って言ったら
「ありがとうございます」ってお礼言われたけども…
なぜ「ありがとうございます」だったのか。
咄嗟に出た言葉だったんでしょうね。笑
:いろんなタイプの曲が入っていますが、作る時はどんな楽器を使っているんですか?
メインのDAWは、StudioOne3というソフトで作曲してます。
この仕事以前はCubaseを何年も使ってたのですが、このタイミングで変更しました。
使い方を覚えながらだったのですが、そんなにストレスなかったです。
ハードのシンセも多用していて、特に恐怖シリーズはとてもめんどくさい音の作り方をしてます。
OP-1で作ったフレーズをMPC TOUCHにサンプリングしてバラバラにして
それでまたリズムパターンを作って、とか。dave smithのTETRAとかnodelead4とか。
とにかく他の人が絶対に出せない音にしようとは思いました。
StudioOne3のsampleoneというサンプラーもたくさん使いました。
ピアノの簡単なフレーズをサンプリングして、それを音階で鳴らしたりとか。
生楽器に関してはドラム以外はすべてプレイヤーとネットを通じてデータでやりとりしました。
サックスに関して、プレイヤーであるKuskeくんにフレーズを指定したところもあるのですが、
基本的に自由にやってもらってます。「狂った感じでお願いします」とだけ伝えました。
もし徳誰の音楽を聴いて「かっこいい」と思う部分があるとしたら、
僕ではなくてKuskeくんのおかげです。笑
今、放送中の「警視庁 ナシゴレン課」という島崎遥香(AKB48)さんのドラマのタイトルも
彼のサックスが入ってるのでかっこよい感じになってます。
:個人的に、タイトルに「シタイ~」と入っている曲がとても印象的です。
どういったところから発想したのか知りたいです。
これはトムウェイツみたいな曲がドラマに合うんじゃない?って監督に提案したのが最初です。
とは言っても、トムウェイツの曲をマネたわけではなくて、
自由に音を詰み重ねていった結果の曲です。
アイドルドラマに、おっさんの歌声というのがアンバランスで面白いなと思ったので。
あとは歌を入れておくと目立てるなーと。笑
:月並みですが、お気に入りの曲を教えて下さい!
ボツになった「使わなかった」という曲です。笑
一番いい曲なので。たぶんメロディアスすぎてボツったのです。
感傷的にならないってことを気をつけてずっと曲を作ってたのですが、
この曲だけ異質になってしまった気がします。
渋谷川みたいなアコースティックでゆっくりな曲というオーダーだったと思います。
この曲には秘密があるのですが、渋谷川の歌詞カードを見ながらぜひ聴いてもらいたいです。
テレビで流れてから種明かしをしようと思ったけども、
ボツになったので、その夢叶わずでした。笑
いい感じのシーンに流れるピアノ曲の「殺さないでください」も、
感傷的になりすぎない、湿っぽくなりすぎないように、
音数を少なくしたりして工夫してます。
「感情そのままの音楽をつけない」「俯瞰でみた感じの音楽で」、
という全体のコンセプトがあったので、いわゆる”せつない系の曲”を作らなかったのですが、
3話の編集が終わった時点で「このシーン用に新曲ください」と言われて作り足したのです。
(*徳山先生の奥さんが出てくるシーンですね)
この曲のメロディーは、僕が音楽をつくりはじめたころのメロディーを元につくりました。
(小室哲哉に憧れてたころ)
初々しい欅を見ていて、僕の初々しいころの曲をのっけたくなったのです。
今回はピアノを誰かにお願いするのではなくて、
楽器が弾けない僕のたどたどしい演奏でいくことに決めました。
2拍ずつとか短いフレーズを録り足していったのです...
:個人的に、スマホの着メロで流すと面白いなと思う曲が多いんですが、
後藤さんならどの曲を選びますか?
音響効果の井上奈津子さんが
「パーティー」と「グッドショウタイム」をめざましにしてるってTwitterに書いてました。
僕としては、自分の曲を流すと毎回反省してしまうので、着メロやめざましには使わないと思います…
「徳山大五郎のテーマ」で目覚めたいって人っているのかな?笑
:ドラマの音楽を作るにあたって、「殺しの女王蜂」、「俺のダンディズム」と共通して、
心がけている事はありますか?
共通してることはあると思うのですが、説明が難しいです。笑
そのドラマでしか作れない曲ということと、自分にしかできないことというのは
どの仕事でも心がけてます。
逆に今回ならではということでいうと無責任にいろんな曲を作りました。
ここまで無責任に曲を作ったのははじめてだと思います。
いつもは台本を読み込んで、どこのシーンにどういう曲がいるかとか、
役者さんの芝居を想像しながら、曲のテンポを決めたり曲調を決めたりするのですが、
今回は、どのシーンにどの音楽がつくかがまるで想像つかない感じにしようと思ってたので
バリエーションをどうするか、世界観をどうするかだけに徹してた気がします。
なので、使われない曲も出てくるだろうなと。
:ドラマを見て下さった方、サントラを購入して下さった方達への、
メッセージがありましたらお願いします。
僕の思い出つくりとして形にしたサントラがここまで反響があってとても嬉しいです。
聞く人それぞれが思い浮かべるシーンやセリフが違うと思いますが、
それがサントラの面白く楽しいところであると思います。
ひとつお願いしたいことがあるとしたら、
「CDの帯を捨てないでください!」ってことです。笑
ぜひ残しておいてください。
わざわざ購入してくださった方、本当にありがとうございました!
スキャット後藤